泰山タイルとは

大正6年に池田泰山により京都市南区の東九条に設立された「泰山製陶所」。
明治から昭和期にかけて最盛期を迎えた洋風建築の需要にともない、工業製品としての大量生産のタイルが生み出されるなかで、泰山は単なる建築材料としてではなく、自然がつくりだす窯変美を備えた手工芸のタイルを追求し、「泰山タイル」を生み出しました。一枚ずつ表情の異なる建築用装飾タイルの技術を追求し、美術工芸品としての地位を確立していきました。

明治以後、殖産興業で街に活気を取り戻そうとしていた京都は、琵琶湖疏水の建設、日本初の水力発電と路面電車、製紙場の開業、フランス式ジャカード機による西陣織の技術革新、ドイツから伝えられた七宝焼の誕生、とあらゆる政策を打ち出しました。
次々と技術的な革新を図り、近代の工芸や美術、産業の発展に尽力してきました。そんな明治から大正期にかけて興隆を見せた美術工芸の中で、その面影を今に伝えているのが「泰山タイル」です。

高い技術とその美しさで注目を集めた泰山タイルは、秩父宮邸、那須御用邸などの宮内庁の格式高い建築、東京国立博物館や東京都庭園美術館、甲子園ホテルなど、国内を代表する多くの近代建物に用いられています。
とりわけ製陶所のあった京都では、京都国立博物館などの名建築はもちろん、喫茶店や銭湯など、市民が日常的に集まる憩いの場にも多く取り入れられました。現在でも泰山タイルは京都の街の片隅でひっそりとその歴史を伝えています。

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